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横田正俊記念賞 第41回 受賞論文 (丁 宇 氏)

論題:「水平型企業結合規制における反競争効果分析─形式的な要因から理論的な枠組みへ(1)~(6)」(法学論叢193巻2号42頁~196巻3号44頁)及び「企業結合規制における理論と実証─水平型企業結合に関する単独効果分析の観点から」(日本経済法学会年報45号113頁(2024)」

丁 宇 氏(新潟大学法学部講師)
「水平型企業結合規制における反競争効果分析─形式的な要因から理論的な枠組みへ(1)~(6)」((1)法学論叢193巻2号42頁、(2)194巻1号15頁(2023)、(3)195巻1号83頁、(4)195巻5号58頁、(5)196巻1号23頁、(6)196巻3号44頁(2024))及び「企業結合規制における理論と実証─水平型企業結合に関する単独効果分析の観点から」(日本経済法学会年報45号113頁(2024)

論文要旨

 法学論叢連載論文は、日本・米国・EU・中国における水平型企業結合の反競争効果の分析枠組みを比較法的に考察し、上記4 か国・地域の競争当局が参照する要因各々の役割と相互関係を明らかにするものである。
 第1章では、初期の重要事例で用いられた分析手法の今日的意義、及び、経済理論を法的分析に導入した歴史的経緯を整理する。上記4 か国・地域とも、市場シェアだけに注目するという初期の方針に理論的な根拠が欠如することを意識し、反競争効果の類型を単独効果と協調効果に分けてそれぞれの発生機序を総合的に勘案するようになったことを明らかにする。説得的な分析結果を出すため、適切な経済理論に基づいて定性的・定量的な証拠を互いに検証・補完する必要があることを指摘する。
 第2章では、単独効果の理論的な分析枠組みの在り方を論じる。支配周辺企業モデルをもって初期の方針の限界の所在を示した上で、それらの限界を補完するために、同質財市場においてクールノ・モデルに基づく競争者の供給余力の評価、差別化財市場においてベルトラン・モデルに基づく当事会社間の転換率の評価を分析の焦点にすべきと主張し、両方の場合に利用可能な定性的・定量的証拠を検討する。
 第3章では、協調効果の理論的な分析枠組みの在り方を論じる。繰り返しゲームの理論に基づいて、当事会社及び主要な競争者にとって、協調的行動による長期的利益が、競争的行動による短期的利益を上回るか否かが分析の焦点となることを主張する。
 日本経済法学会年報論文は、単独効果分析を取り上げ、過去の事例における「経済分析」の利用を評価の上、「現代的課題」に対応する分析手法の変容を展望するものである。
 まず、経済分析について、日本の競争当局が定量的指標を積極的に導入しているが、従来の定性的分析の結論と一見整合的な計算結果を導き出す道具として不適切に利用しており、関連市場の取引実態への調査が不十分であることを指摘する。
 次に、現代的課題について、米国の2023 年合併ガイドラインにおいて表現上の大幅な修正が行われたものの、従来の分析枠組みの目的・役割・効果に実質的な変化がないことを論証する。
 近年現れたスタートアップ買収などの事案における新たな競争問題を分析する際に、標準的な経済理論に一定の限界が存在するとはいえ、従来の立証基準等を変更する必要がない一方、ダイナミック競争の観点から反競争効果の蓋然性に関する定性的・定量的証拠を収集すべき場合がありうることを主張する。
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