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独禁法よもやま話(第20回)

第20回「公正取引委員会の相談事例集」

キョウ子さん
 公正取引委員会が相談事例集を公表しましたが、相談事例集とはどのようなものですか。
どっきん先生
 公正取引委員会には、企業や事業者団体から独占禁止法に関する相談を受け付け、回答する部署が本局や各地方事務所等にあります。これらの相談が毎年1500件から2000件程度寄せられるのですが、その相談の中から毎年、10件前後を選んで相談事例として公表しているものです。
キョウ子さん
 相談は、どのようにすればよいのですか。
どっきん先生
 相談には、2つの種類があり、1つは事前相談制度に基づく相談(事前相談)です。
 これは、一定の書式に沿って書面で相談をするもので、公正取引委員会も書面で回答します。
 この場合には、相談者の名前や相談内容が公表されることになります。
 回答が独占禁止法上問題ないとされた場合には、当該相談に基づく企業の行為に対して法的措置が採られることはありません。
 このため、公正取引委員会も相談者から詳しく相談内容を聞いていくことになります。この事前相談は、各省庁で行われているノー・アクション・レターと呼ばれるものと類似した制度です。
 詳細については、公正取引委員会のホームページに記載されています。
キョウ子さん
公表されるんですね。
どっきん先生
そうなんです。もう1つは事前相談以外の一般的な相談です。
相談の仕方は特に決まっていなくて、電話や来訪して相談するなど様々ですし、相談内容も抽象的なものから、具体的なものまであるようです。どのような相談をするかはあくまで相談者の任意です。ただし、公正取引委員会の回答も書面ではなく口頭で行われます。
こちらの相談の場合には、相談者名が公表されることはありません。
キョウ子さん
どちらの相談が多いのですか。
どっきん先生
事前相談については、平成25年に行われたものが最後ですので、ほとんどが一般相談になっています。相談者名や相談内容が公表されるかどうかが関係するのかもしれません。
キョウ子さん
企業から見ると、この相談事例集をどのように活用すればいいですか。
どっきん先生
相談事例集には、流通・取引慣行に関する相談や共同行為に関するもの、事業者団体に関するものなど様々な行為類型の中から、特に参考となるものが掲載されています。
また、その時々の関心事項に応じた相談なども掲載されています。架空の相談事例ではなく、実際にあった相談をベースにしているので、企業にとっても大変参考になると思います。
また、公正取引委員会でもそのような事例を掲載しているのだと思います。
キョウ子さん
独占禁止法を学ぶ人にとってはよい教材にもなりますね。
どっきん先生
そうですね。独占禁止法の条文を読んでもなかなか難しいですよね。
独占禁止法の教科書を一通り読んだ後に、実際のビジネスの場でどのように法律の規定が適用されるのかを理解するのには最適ですね。
大学の経済法の授業の教材の一部として用いられることもあると聞きます。
キョウ子さん
相談事例をもう少し詳細に書いてもらうと、もっと分かるような気がするのですが。
どっきん先生
一般相談はあくまで企業が任意に相談するものであり、公表を前提にしているものではありません。このため、相談者が特定できないように事実関係についてもある程度抽象的にならざるを得ない場合があります。また、企業がこれから行おうとする行為ですから、営業戦略として行為の具体的な内容をあまりオープンにはできないという場合もあります。
それでも、独占禁止法の考え方を知る上では十分だと思います。
キョウ子さん
特定の行為、例えば、販売先や販売地域の制限に関する相談事例が知りたいという場合には、どうすればいいのですか。
どっきん先生
現在の相談事例集の形になったのは、平成10年代のはじめ頃ですから、これまでかなりの数の相談事例の蓄積があります。公正取引委員会のホームページには、行為類型別や産業別に相談事例が検索できるようになっていますので、これを活用すればよいと思います。
キョウ子さん
このようなお話を聞くと、企業としても、積極的に相談事例集を活用すべきですね。
どっきん先生
そのとおりです。
キョウ子さん
ちなみに米国やEUの競争当局でもこのような相談事例集を公表しているのですか。
どっきん先生
米国では、公正取引委員会の事前相談に相当するものとして、司法省のビジネス・レビュー・レター、連邦取引委員会(FTC)のアドバイザリー・オピニオンがあります。
これらは、いずれも公表されていますが、年間数件程度です。
また、公正取引委員会の一般相談のような仕組みはないと思います。
また、EUでは公正取引委員会のように対外的に公表して広く相談を受け付けるような仕組みはないと思いますし、相談事例が公表されることもないと思います。
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