論題:「電力自由化と法─競争と多様な政策の実現」
佐藤 佳邦 氏(山口大学経済学部准教授)
「電力自由化と法─競争と多様な政策の実現」信山社出版(令和6年)
論文要旨
我が国の電気事業では、小売の全面自由化(2016年)、ネットワーク部門の法的分離(2020年)が実施されたが、これらの競争促進策と、電源確保・再生可能エネルギー普及・需要家保護・安全確保といった施策との両立が課題となる。本書はこれらのテーマについて、競争法や競争政策の観点から論じた。
第Ⅰ部「電力産業への市場メカニズムの導入と公正競争確保の課題」では、市場メカニズム導入後の公正競争確保の課題や市場支配力のコントロールのあり方、電源投資インセンティブの確保といった課題を、競争法の観点で検討した。まず、発電事業への競争導入を進める米国で、裁判所が事業者の市場支配力の問題をどのような法的枠組みでコントロールしてきたかを明らかにした(第1章)。次に、電力・ガスの長期契約をとりあげ、EUでは競争への悪影響が懸念される場合には、競争法で契約期間に上限を設けていることを示した(第2章)。日本のベースロード市場(2019年運用開始)については、独禁法(不当廉売・マージンスクイーズ)による市場支配力の規律を検討した(第3章)。電力・ガス事業者の合併規制については、EU競争法当局による事例を検討し、その特徴を明らかにした(第4章)。
第Ⅱ部「多様な電源確保と競争中立性の両立をめぐる法・政策」では、競争導入後の電気事業において、電源間の競争の公平性を維持しながらその多様性の確保を図ることの課題を、経済法・エネルギー法の視点から検討した。まず、米国の再エネ電力買取制度(FIT)をめぐる法制度を整理した上で(第5章)、送電線オープンアクセス制度との関係など競争政策の観点からの評価を論じた(第6章)。次に、EUにおける再エネFIT 制度導入期の議論をレビューし、同制度には競争法・政策の観点から強い批判があったことを明らかにした(第7章)。最後に、原子力バックエンド事業に対するEU国家補助規則の適用について検討した(第8章)。以上をもとに、日本の再生可能エネルギー普及策について経済法的な視点から若干の提言を行った。
第Ⅲ部「エネルギー事業における消費者保護と事業規制機関をめぐる課題」の前半では消費者の視点から、電力ユニバーサル・サービスの法的課題(第9章)や電力・ガス市場におけるセット販売割引の独禁法上の問題を検討した(第10章)。後半では規制機関に着目し、電力・ガス取引監視等委員会と公正取引委員会の関係や(第11章)や米国の原子力規制委員会(NRC)の法制度の問題を法的観点から検討した(第12章)。
第Ⅰ部「電力産業への市場メカニズムの導入と公正競争確保の課題」では、市場メカニズム導入後の公正競争確保の課題や市場支配力のコントロールのあり方、電源投資インセンティブの確保といった課題を、競争法の観点で検討した。まず、発電事業への競争導入を進める米国で、裁判所が事業者の市場支配力の問題をどのような法的枠組みでコントロールしてきたかを明らかにした(第1章)。次に、電力・ガスの長期契約をとりあげ、EUでは競争への悪影響が懸念される場合には、競争法で契約期間に上限を設けていることを示した(第2章)。日本のベースロード市場(2019年運用開始)については、独禁法(不当廉売・マージンスクイーズ)による市場支配力の規律を検討した(第3章)。電力・ガス事業者の合併規制については、EU競争法当局による事例を検討し、その特徴を明らかにした(第4章)。
第Ⅱ部「多様な電源確保と競争中立性の両立をめぐる法・政策」では、競争導入後の電気事業において、電源間の競争の公平性を維持しながらその多様性の確保を図ることの課題を、経済法・エネルギー法の視点から検討した。まず、米国の再エネ電力買取制度(FIT)をめぐる法制度を整理した上で(第5章)、送電線オープンアクセス制度との関係など競争政策の観点からの評価を論じた(第6章)。次に、EUにおける再エネFIT 制度導入期の議論をレビューし、同制度には競争法・政策の観点から強い批判があったことを明らかにした(第7章)。最後に、原子力バックエンド事業に対するEU国家補助規則の適用について検討した(第8章)。以上をもとに、日本の再生可能エネルギー普及策について経済法的な視点から若干の提言を行った。
第Ⅲ部「エネルギー事業における消費者保護と事業規制機関をめぐる課題」の前半では消費者の視点から、電力ユニバーサル・サービスの法的課題(第9章)や電力・ガス市場におけるセット販売割引の独禁法上の問題を検討した(第10章)。後半では規制機関に着目し、電力・ガス取引監視等委員会と公正取引委員会の関係や(第11章)や米国の原子力規制委員会(NRC)の法制度の問題を法的観点から検討した(第12章)。