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独禁法よもやま話(第24回)

第24回「指定価格制度」

キョウ子さん
 最近、家電メーカーが指定価格制度の導入を始めたとの報道がなされています。家電メーカーが販売店に対し小売価格を指定する一方で、売れ残った製品を販売店から引き取るという仕組みを指しているようです。
 これまで、メーカーが販売店に対し小売価格を指定することは、独占禁止法上の再販売価格の拘束として問題になると理解していたのですが、報道によれば、この指定価格制度は独占禁止法上問題とはならないようです。これはどういうことでしょうか。
どっきん先生
 まず、法律の規定がどうなっているか確認しておきましょう。独占禁止法第19条は、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」と規定しています。
 そして、この「不公正な取引方法」の定義が同法第2条第9項で定められ、いくつかの行為が挙げられているのですが、そのうちの一つが「自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること」(同項第4号)としています。そして、「次のいずれかに掲げる」ものとして、「相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること」としています(同項第4号イ。もう一つあるのですが、ここでは省略します。)。これが、再販売価格の拘束を禁止する根拠となっているわけです。
 つまり、簡単に言えば、メーカーと販売店の取引で言えば、正当な理由がない限り、メーカーが販売店の小売価格を指定してはいけないということになります。
キョウ子さん
 そうですね。私もそのように理解していました。
どっきん先生
 このように独占禁止法で禁止される再販売価格の拘束については定義が置かれているのですが、一般的な書き振りとなっており、取引の実態に照らして具体的にどのような行為が問題となるのか、なかなか判断が難しいところがあります。
キョウ子さん
 再販売価格の拘束をはじめとする不公正な取引方法については特にそのように思いますね。ビジネスの世界では、様々な業種において様々な取引がありますからね。
どっきん先生
 このようなこともあり、公正取引委員会では、いろいろなガイドイランを作成・公表することにより、違反行為の未然防止を図るとともに、法運用の透明性を高めようとしています。この再販売価格の拘束についても、公正取引委員会が公表している「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月11日)(注)、いわゆる流通・取引慣行ガイドラインの中で、具体的にどのような行為が問題となるかなどを説明しています。
どっきん先生
 この流通・取引慣行ガイドラインの中で、「事業者の直接の取引先事業者が単なる取次ぎとして機能しており、実質的にみて当該事業者が販売していると認められる場合には、当該事業者が当該取引先事業者に対して価格を指示しても、通常、違法とはならない。」との考え方を示しています(ガイドライン第1部第1-2⑺)。
 そして、この違法とはならないケースとして、次の2つを挙げています。一つは、「委託販売の場合であって、受託者は、受託商品の保管、代金回収等についての善良な管理者としての注意義務の範囲を超えて商品が滅失・毀損した場合や商品が売れ残った場合の危険負担を負うことはないなど、当該取引が委託者の危険負担と計算において行われている場合」です。
 そして、もう一つは、「メーカーと小売業者(又はユーザー)との間で直接価格について交渉し、納入価格が決定される取引において、卸売業者に対し、その価格で当該小売業者(又はユーザー)に納入するよう指示する場合であって、当該卸売業者が物流及び代金回収の責任を負い、その履行に対する手数料分を受け取ることとなっている場合など、実質的にみて当該メーカーが販売していると認められる場合」です。
キョウ子さん
 この指定価格制度は、上記2つのケースのいずれにも該当しないように思われますが。
どっきん先生
 確かにそうですね。報道されている指定価格制度の詳細な内容は必ずしも明らかではありませんが、2つのケースのいずれとも少し異なるようですね。
 この指定価格制度に関連して、実は、公正取引委員会が令和元年度の相談事例集において、「家電メーカーによる小売業者への販売価格の指示」と題する相談事例(注)を挙げています(相談事例集の概要については「よもやま話第20回」参照)。
 この相談事例において、タイトルにあるとおり、家電メーカーが小売業者の販売価格を指示しているのですが、家電メーカーが様々なリスクを負担することとしていることから、小売業者は単なる取次ぎとして機能しているにすぎないとして独占禁止法上問題となるものではないとの回答をしています。この相談内容を読む限り、今回の指定価格制度における独占禁止法上の考え方もこれと同様のものではないかと思われます。
キョウ子さん
 なるほど、小売業者が単なる取次ぎとして機能している点に着目して、独占禁止法上の考え方を示しているのですね。ガイドラインや相談事例の話を聞くと、指定価格制度についての独占禁止法上の考え方も理解できるようになりました。
どっきん先生
 一つ注意しなければならないのは、独占禁止法上問題となるかどうかの判断に当たっては、契約書や覚書など書面において、事業者間でどのような取決めがなされているかも大事なのですが、実際の取引がどのように行われているか、その実態が重要となってきますので、その点は取引において注意していく必要があると思います。
キョウ子さん
 分かりました。取引実態が重要ということですね。独占禁止法上の問題を考える際に、事業者が行おうとする行為がガイドラインや相談事例などで具体的に示されている場合はいいのですが、そうでない場合にはなかなか判断に迷う場合もありますね。
どっきん先生
 そうですね。独占禁止法の「不公正な取引方法」は公正な競争を阻害するおそれのあるものです。よく公正競争阻害性と言われるのですが、これが認められるかどうかということですから、最後は原点に戻って、この公正競争阻害性の観点から考えていくということでしょうね。
キョウ子さん
 ちなみに、公正取引委員会が再販売価格の拘束として措置を採った最近の事例としては、どのようなものがあるのでしょうか。
どっきん先生
● 直近だと、即席めん等の販売業者が小売業者の販売価格を拘束した疑いのある事例があります(確約計画の認定。令和4年5月19日公表(注1))。また、少し前になりますが、ベビーカー等の販売業者が小売業者の販売価格を拘束した事例があります(排除措置命令2件。令和元年7月1日及び令和元年7月24日公表(注2,3))。
キョウ子さん
 再販売価格の拘束、あるいは再販という言葉はよく聞きますが、ガイドラインなどでよく理解しておかなければならないですね。
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